「自分は上手く説明できたつもりなのに、相手に全然伝わらない。話しているうちに、何を話したいのか分からなくなってしまう。説明上手になりたいな。」
こういった疑問にお答えします。
本記事の内容
・なぜあなたの説明は伝わらないのか?
・説明上手になるために知っておくべきこと
・相手に伝わる説明をするコツ
突然ですが、20代30代のビジネスパーソンの中で、「説明することが得意」と感じている人は、どのくらいいると思いますか?
実は、たったの2割しかいません。
1,000人のビジネスパーソンを対象に行われたマイナビニュース会員調査の結果は、以下の通りです。
「何を言っているか意味が分からない」と言われた経験がある人が6割以上、自分で「説明が苦手」と自覚している人は約8割もいました。
仕事を円滑に進めていくために、何かしら説明しなければならない場面は必ずあります。
しかし実際には、説明力が重要にも関わらず、説明が苦手と感じている人がとても多いのです。
本記事の信頼性
私は、若手社員の人材育成を3年間担当し、コミュニケーションに関する悩み解決をサポートしてきました。
また自己スキルアップのため、コミュニケーション関連の書籍を年間30冊ほど読んでいます。
もともと私も相手に説明するのが苦手でして、「時間をかけて説明しているけど、何が言いたいのか分からない」とよく相手に言われていました。
話しているうちに、何を話したいのか分からなくなってしまうことがよくあり、コミュニケーションで長年悩んでいました。
しかし、そんな私だったからこそ、どうしたら伝わる説明ができるようになるかを分析し行動した結果、若手社員の人材育成担当としてコミュニケーションに関する悩みサポートができるまでに成長できました。
本記事では、説明上手になるために私が実践してきた方法を、分かりやすくご紹介していきます。
ちょっと前置きが長くなってしまいましたが、さっそく始めていきましょう。
なぜあなたの説明は伝わらないのか?
説明上手になる方法をお話する前に、なぜあなたが伝わらない説明をしてしまうのか解説します。
人は相手の話の80%は聞いていない
「話が伝わらないのは、相手の聞き方に問題があるんじゃないの?」と思ったことはありませんか。
確かに多くの場合、相手の聞き方に問題があります。
そもそも、人は相手の話の80%は聞いていません。
例えば、あなたもこんな聞き手の場面を経験したことがないでしょうか?
・もともと興味のない話だと、退屈になって集中して聞けない
・最初は聞こうと思ったとしても、いつの間にかぼんやり違うことを考えてしまっている
自分が興味のある話だったり、忙しくなければ相手の話をしっかり聞くかもしれません。
しかし、興味のない定例会議に毎回参加したり、自分の仕事が忙しかったりした時は、相手の話がまったく耳に入ってこなかった経験がきっとあると思います。
私が若手社員だった頃、当時の上司がとても忙しい方でして、仕事の相談をしても、真剣に聞いてもらえませんでした。
上司の聞き方の改善を部長に相談したところ、一時的には上司が話を聞いてくれるようになります。
しかし、相手を動かすのは難しく、数週間で以前と同じ聞き方に戻ってしまいました。
上司の仕事量は変わらなかったため、仕事の負荷が高いまま、部下の話を聞けと言われても無理があったのだと思います。
相手を変えるのをやめて、自分を変えることだけに注力する
私の説明力が劇的に向上するきっかけとなった、ある言葉をご紹介します。
”健全な人は、相手を変えようとせず自分が変わる。不健全な人は、相手を操作し、変えようとする。”
ベストセラー書籍「嫌われる勇気」を読んで知った、アルフレッド・アドラーが残した名言です。
それぞれの人が考え行動している事は、その人のその人自身の正解なので、相手の考えを変えるのはそう簡単ではありません。
相手を変えるのではなく、「自分自身ができることは何か?」を考えながら、自分を変えていくことが重要だとアドラーは提唱します。
私自身この考え方を知ってから、上司の聞き方ではなく、自分の伝え方を変えるよう行動しました。
伝え方を工夫した結果、相手の時間を取らせず簡潔に分かりやすく説明できるようになり、上司が真剣に話を聞いてくれる機会が増えました。
相手に伝わらないを前提に、まずは自分自身がどういう伝え方をすれば良いか考えましょう。
このように、「起きた問題の原因は自分にある」と捉えて、根本原因を見直す考え方を「原因自分論」といいます。
原因自分論について詳しく知りたい方は、【人生が好転する】原因自分論という考え方 の記事をぜひご覧ください。
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参考【人生が好転する】原因自分論という考え方
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「自分が伝えやすい=相手が理解しやすい」と勘違いしている
自分に原因があることを前提に考える準備ができたところで、なぜ自分の話が相手に伝わらないのか解説していきます。
あなたの言いたいことが伝わらないのは、自分が伝えやすい=相手が理解しやすいと勘違いしているからです。
自分が話したいことが、常に相手の聞きたいこと・理解しやすいことだとは限りません。
例えば、あなたが上司の立場だと仮定して、部下からこんな業務報告を受けたらどう感じるでしょうか?
「A社の高橋様から10時頃お電話がありまして、山田課長とのアポを16時以降に変更してほしいとおっしゃっていて、席を外されていたため、私が代わりに18時なら大丈夫と回答したのですが、17時はダメかとおっしゃっていて…」
自分の頭に思い浮かんだことを時系列でそのまま説明されると、「結局何を言いたいの? で、どうしてほしいの?」と思わず突っ込みたくなりますよね。
「社会人と学生のコミュニケーションの違い」を理解していない
それでは、なぜ自分が伝えやすい話し方をしてしまうのか。
重要な部分なのでもう少し掘り下げてみましょう。
それは、
社会人と学生のコミュニケーションの違いを理解せず、学生のコミュニケーションをしてしまっているからです。
社会人と学生では、コミュニケーションの仕方が本質的に異なります。
社会人のコミュニーケーションが、学生のコミュニケーションと異なる点は以下3つ。
・上下関係が存在するコミュニケーション
・受け手が中心のコミュニケーション
・要求を含むコミュニケーション
ひとつずつ見ていきましょう。
上下関係が存在するコミュニケーション
学生同士のコミュニケーションは、お互いが対等な関係であることが多いです。
社会人では、上下関係に基づくコミュニケーションが基本。
例えば、上司と自分、顧客と自分。
社会人になると、立場の異なる相手と話す機会が多いので、相手の立場を意識した話し方をする必要があります。
受け手が中心のコミュニケーション
学生同士のコミュニケーションは、基本的に発信者が主であり、受け手は従。
つまり、「自分が言いたいことを言って、話が合えばコミュニケーションが成立。合わなければ友人ならなければ良い」というスタンスです。
しかし社会人では、そうはいきません。
相手が誰であろうと、受け手に合わせるコミュニケーション、すなわち受け手が中心のコミュニケーションの技術が必要とされます。
要求を含むコミュニケーション
学生同士のコミュニケーションは、相手に対する要求を含まなくて良い。要するに、人間関係を円滑にしさえすれば良いです。
社会人では、相手に何らかの行動を起こしてもらうことを暗黙的に含みます。
例えば、
・部下に対して、すぐに取り掛かってほしい
・部下に対して、状況を報告してほしい
・上司に対して、仕事をフォローしてほしい
こういった要求を常に含むのが、社会人のコミュニケーションです。
コミュニケーションの違いをまとめると、以下の通り。
- 学生:話し手中心で、人間関係を円滑にすることが目的
- 社会人:聞き手中心で、自分の要求を伝えることが目的
説明上手になるために知っておくべきこと
次に、説明上手になるためにあなたが知っておくべき大切なことをご紹介します。
説明する前に思考を整理する
聞き手中心で説明するために重要なのは、相手が知りたいことを、相手が理解できる順番で話すことです。
では、まず何をすべきか。
それは、説明をする前に思考を整理することです。
事前に説明する内容を整理しておけば、頭に思い浮かんだことをそのまま話すような話し手中心の説明を防げます。
思考をまとめる手順は以下3ステップ。
①:伝える目的を明確にする
②:相手の知りたいことを明確にする
③:ギャップを埋めるために、何が必要か考える
ひとつずつ見ていきましょう。
ステップ①:伝える目的を明確にする
相手にどうしてほしいか、伝える目的をまず明確にしましょう。
仕事を円滑に進めるためには、チームワークが重要です。
そこで相手に動いてもらうために、コミュニケーションが必要となります。
ポイントは、相手にただ理解してもらうのではなく、どう動いてもらいたいかまで考えること。
例えば、上司に業務報告する場面。
❌:業務が遅れていることを理解してもらう
⭕️:遅れに対するリカバリー案を一緒に考えてもらう
相手にどう動いてもらいたいかをゴールとして、伝える目的を明確にしましょう。
ステップ②:相手の知りたいことを明確にする
次に、相手の立場になって相手が知りたいことを明確にしましょう。
自分の言いたいことを、どれだけたくさん伝えても、相手の心に響くとは限りません。
そもそも、人は相手の話の80%は聞いていないので、いかに相手の興味があることを伝られるかが重要となります。
例えば、上司へ業務報告する場面。
相手(上司)の知りたいこと:
・期待した成果が出そうかどうか
・もし成果が出ないとしたら、どういう対策を行う必要があるのか
・その対策において、上司自身はどういう支援をするべきなのか
などが明確になっているべきです。
若手社員の場合、自分が経験したことのない上司や先輩社員の立場で考えるのは難しいです。
そんな時は、まず「相手が求めているものは何か」を想像してみましょう。
・相手が知りたいと思っていることは何か
・相手が聞きたいと思っていることは何か
最初は的外れでも良いので、考える癖をつけることが重要。
常に「この人は、何を求めているのだろうか」と想像し、それが合っていたかどうかを後で相手に聞いて検証していきましょう。
ステップ③:ギャップを埋めるために、何が必要か考える
多くの場合、相手が知りたいことと、自分の伝えたいことにはズレ、すなわちギャップがあります。
上司への業務報告の場合、上司の知りたい「期待した成果の達成状況」と、自分の伝えたい「仕事のサポート依頼」はかみ合いません。
ギャップを明確化した上で、それを埋める手立てを考えましょう。
先ほど同様、上司に業務報告をする場合であれば、
・上司が期待している成果
・その成果の数字上の達成状況
・目標達成のために、現状の努力で十分かどうか
・もし不足している場合は、どのような行動でカバーするか
などを明確にしましょう。
ギャップを埋めるアプローチとして自分の情報を補強する方法があります。
ギャップを埋めるために必要な項目を、全て網羅するように準備するのが情報補強のアプローチです。
先ほど洗い出した項目を、相手の知りたいことから初めて、自分の伝えたいことにつながるように相手に伝えます。
例えば、20日でプログラム10本作成の仕事を任されたが、進捗が間に合わず上司にサポート依頼したい場合。
・ゴールは、20日でプログラム10本作成
・現状は、8日で2本しか作成できていない
・残り12日で自力で作成できるのは3本予定のため、残り5本が間に合わない
・リカバリーとして時間確保のため、2週間分の土日(4日間)も出社する
・休日出社しても残り3本が間に合わないため、追加メンバーをアサインするか、納期を遅らせてもらえないか上司にお願いする
このように説明できれば、相手の知りたいことに答えつつ、自分の伝えたいことを織り込んでいくことができます。
相手に伝わる説明をするコツ
説明上手になるための考え方を理解したら、実際に話し方のテクニックを学んでいきましょう。
相手が理解しやすい順番で説明しよう
相手の頭を整理しながら伝えることが、伝わる説明のコツです。
イメージとしては、相手の頭の中に地図を描いて、今何について話しているか相手が立ち位置を常に把握できていることが理想的です。
そのために、相手が理解しやすい順番で話をしてあげましょう。
具体的な説明の順番は以下の通り。
①:前提をそろえる
②:結論・主張
③:根拠・理由・事実
④:結論・相手位に促したいアクション
ひとつずつみていきましょう。
順番①:前提をそろえる
前提とは、これから話す内容について、相手がどの程度のレベルの知識を持っているかを指します。
例えば、
・常日頃、顔を突き合わせている会社の同僚や上司に、日常的な業務の説明や話をする上では、前提は特に必要ない。
・しかし、十数年ぶりに会った友人に、「今やってる仕事は何?」と聞かれた場合には、もともと共有できている情報が少ないため、同僚や上司に反すように説明してもうまく伝わらない。
相手の理解度や知識の状況を考えずに、いきなり結論から話し始めてしまうと、相手はついてこれない場合があります。
そこで、相手の知らないことを伝えるときや、過去に話したことはあるけれどその内容を覚えていなさそうな場合は、結論よりも前に、前提情報の共有を行いましょう。
前提をそろえる方法については、【結論から話すのはNG】前提をそろえるための3つの方法 でより詳しく解説しています。
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参考【結論から話すのはNG】前提をそろえるための3つの方法
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順番②:結論・主張
結論とは、あなたが伝えたいこと、説明したいことをまず一言で伝えること。
話の前提が揃っている場合は、説明するべき結論や自分の主張をズバリ伝えましょう。
ただしこのやり方は、これから説明しようとする内容について、相手が大まかに全体像を把握している場合に限ります。
例えば、前提を知らない人に「X社への提案は、失敗位に終わりました」と言っても、”どういう提案をしたか”という経緯を理解してない人には伝わりません。
伝えたいことを話す前に、きちんと前提知識を共有してから「結論」を述べましょう。
順番③:根拠・理由・事実
前提を揃えて、結論や主張を伝えることができたら、その根拠や理由、事実を伝えます。
根拠や理由を伝える時のポイントは以下3つ。
・これから理由を伝えることを示す
・理由をできれば3つに絞る
・理由や根拠は客観的事実で構築する
「結論・主張」は多くの場合、あくまで主観です。
それを下支えする「根拠や理由」は、客観的事実でなくてはいけません。
根拠や理由が主観的なものになってしまうと、あなたの説明は説得力が得られなくなります。
説得力を持たせるには、具体的にはデータの類いが有効です。
自社の売上データ、市場シェアの調査結果などが代表です。
上記のようなデータを示せない場合は、自分の業務実績を事実ベースで具体的に伝えると良いです。
例えば、20日で10本のプログラム作成の仕事について業務報告する場合、どちらの報告が安心感がありますか?
「順調に進んでいるので予定通りです。」
「現在は10日で5本完成しているため、残り5本も納期までに完成できる見込みです。」
具体的な状況が分かる後者の方が、説得力があり安心して報告を受けられますよね。
ポイントは、事実を数字で表現すること。
数字を使って具体的な情報を提示できれば、説得力が増します。
順番④:結論・相手に促したいアクション
最後にもう一度、結論や主張を伝えます。
説明の冒頭で、既に結論や主張を伝えているので、不要だと考える人もいるかも知れません。
しかし、結論以降の根拠や理由の説明が長くなればなるほど、聞き手は話の出口を見失いがちです。
例えば、10分、20分聞いていると「結局、どういうことだったの?」「それで言いたいことってなんだっけ」となってしまう恐れがあります。
最後にもう一度、結論、あるいは自分の主張を伝えましょう。
さらに、結論から導かれる相手に求めるアクションがある場合は、最後に改めて伝えましょう。
まとめ:相手の立場になって、聞き手中心のコミュニケーションをしよう
言いたいことが伝わる説明をするために、知っておくべきことを3つ紹介しました。
あなたの話が伝わらないのは、自分が伝えやすい=相手が理解しやすいと勘違いしているからです。
勘違いしている人の多くが、学生のコミュニケーションに慣れてしまい、話し手中心の説明になっています。
社会人のコミュニーケーションが、学生のコミュニケーションと異なる点は以下3つ。
・上下関係が存在するコミュニケーション
・受け手が中心のコミュニケーション
・要求を含むコミュニケーション
社会人として、聞き手中心のコミュニケーションを意識しましょう。
聞き手中心の説明をするために、相手が知りたいことを、相手が理解できる順番で話すことが重要です。
そのために、まずは説明の前に思考をまとめる必要があります。手順は以下3ステップ。
ステップ①:伝える目的を明確にする
ステップ②:相手の知りたいことを明確にする
ステップ③:ギャップを埋めるために、何が必要か考える
思考をまとめたら、相手が理解できる順番で説明を考えます。順番は以下の通り。
1. 前提をそろえる
2. 結論・主張
3. 根拠・理由・事実
4. 結論・相手位に促したいアクション
相手の頭を整理しながら伝えることが、伝わる説明のコツです。
最後に、コミュニケーション関連の書籍を年間30冊読んでいる私が、読んで本当に参考になった書籍だけを厳選して紹介します。
1分で話せ
一番伝わる説明の順番